相続人全員で遺産分割について話し合いたいのに、「手紙を送っても返事がない」「兄弟と何年も連絡を取っていない」「住所は分かるけれど、話し合いに応じてもらえない」といったご相談をいただくことがあります。
相続人が多いケースや、長期間相続手続きをしていなかったケースでは、こうした問題が起こりやすくなります。
では、相続人の一人と連絡が取れない場合、その人を除いて遺産分割を進めることはできるのでしょうか。
結論からいうと、連絡が取れないからといって、その相続人を除外して遺産分割協議を成立させることはできません。
例えば、相続人が兄弟4人いる場合、3人だけで、「実家は長男が相続する」と合意しても、残る1人を除いた遺産分割協議では手続きを進めることができませんので、「何年も連絡を取っていない」「相続には興味がないと言っていた」という事情があったとしても同様に、相続人全員を正確に確認することが必要です。
「連絡先が分からない」という場合でも、司法書士の職権で住民票上の住所を調査できることは可能なので、現在の住所を確認していき、住所が判明したら、まずは手紙を送るなどして連絡を取ることになります。
長年疎遠だった親族に突然連絡することになるため、最初の通知の内容にも配慮が必要です。
難しいのが、手紙は届いているものの、まったく返事をしてもらえないケースです。
相続人には、遺産分割協議に賛成する義務があるわけではなく、そのため、何度連絡しても話し合いができない場合には、当事者間だけでの解決が難しくなります。
このような場合には、家庭裁判所へ遺産分割調停を申し立てることを検討することになります。
遺産分割調停は、家庭裁判所で、調停委員を介して相続人同士の話し合いを行う手続きです。
当事者同士で直接話すと感情的になってしまう場合でも、裁判所を介することで話し合いが進むことがあります。
それでも合意できなければ、原則として遺産分割審判へ移行し、最終的には裁判所が遺産分割の方法を判断することになります。
「相手が返事をしてくれないから何もできない」という状態をいつまでも続ける必要はありません。
さらに難しいのが、調査しても相続人の所在が分からないケースです。
単に連絡を取っていないというだけではなく、住所を調査しても、その人が現在どこにいるのか分からないという場合には、家庭裁判所へ不在者財産管理人の選任を申し立てる方法などを検討することがあります。
選任された不在者財産管理人が、不在者本人に代わって財産を管理し、不在者財産管理人と遺産分割協議をすることになりますが、この場合、通常の相続よりも時間と費用がかかる可能性があります。
「連絡が取れない人がいるから、しばらくそのままにしておこう」という判断には注意が必要です。
その間に別の相続人が亡くなれば、さらにその方の相続が発生し、新たな相続人が加わり、当初は数人だった相続人が10人以上に増えてしまうこともあります。
連絡を取らなければならない相手が増えれば、当然、遺産分割をまとめることも難しくなります。
相続は、時間が解決してくれるとは限りません。むしろ、時間の経過によって複雑になることがあります。
相続のご相談では、この二つが混同されることがあります。
住所は分かっていて、連絡しても返事をしないのであれば、単に「話し合いに応じない」という問題です。
一方、調査をしても現在の所在が分からないのであれば、「不在者」としての対応を検討することになります。
どちらに該当するかによって、次に取るべき手続きは大きく異なります。
相続人の一人と連絡が取れないからといって、その方を除いて遺産分割を進めることはできません。
しかし、一人が返事がない事で相続手続きができないというわけでもありません。
まずは相続人と住所を調査し、連絡を試み、それでも話し合いができなければ遺産分割調停、所在そのものが分からなければ不在者財産管理人の選任など、状況に応じて次の手続きを検討することができます。
「何年も連絡を取っていない相続人がいる」「手紙を送ったけれど返事がない」「相続人の住所が分からず、相続登記ができない」といった場合には、そのまま長期間放置せず、早めにご相談ください。
当事務所では、相続人の調査から相続登記、必要に応じた家庭裁判所への申立書類作成まで、状況に応じて手続きをご案内いたします。